評判「007/スカイフォール」
「007/スカイフォール」
007シリーズの新作「007/スカイフォール」。
ロンドンでは先日マスコミ向けに特別試写会が開かれ、非常に評判がよろしいらしい。
どれくらい良いかというと、中には「今までのボンドフィルムの中でベスト」との声もあるくらいだ。
期待しすぎちゃいかん・・・と思いつつもこれは期待せざるをえない。
そんなわけで、今ホットなこの映画の情報を紹介。
今回はMを中心としたストーリーが展開されるようだ。
Mにつきまとう過去の亡霊、MI6本体を攻撃する敵、それを迎え撃つボンド、といった構図になるよう。
ボンドとMの関係にも注目だ。
そして忘れてはならないのは、007シリーズでおなじみのQが登場すること。
ダニエル版007では初めての登場なので、ファンには嬉しい限り。
海外の有名な映画レビューサイト Rotten Tomatoes ではほぼ満点。
以下、レビューの中からいくつかの記事を紹介。
「ボンドが帰ってきた!そして今まで以上に危険だ」
「ボンドとMの裏話を知るのに50年かかったが、待ったかいがあった」
「リアリティと様式美、007新作と旧作、シリアスとユーモアのバランスが見事。今後の新たなボンド映画の始まり。」
「悪役シルバ(ハビエル・バルデム)はレクターやジョーカー、モリアーティを彷彿とさせる狂気の天才」
「ブレードランナー風のクールな戦闘シーンから、スコットランドでの見事なフィナーレ」
どこを見ても絶賛の嵐である。
演技面で評価が高いのが悪役シルヴァを演じるハビエル・バルデム。
今回もオスカーを期待されるほどの強烈な役柄のようだ。
(ゲイの役ではないかとの噂も)
「ノーカントリー」でも強烈な悪役を演じたハビエル・バルデム。
監督は「アメリカン・ビューティー」でアカデミー賞をとったサム・メンデス。
実は007シリーズをオスカー監督がやるのは初めて。
そんなメンデス監督は今回の作品について「ダークナイト」に強く影響を受けたと発言している。
本作の悪役シルヴァはジョーカーとも比較されているので、きっと恐ろしい役柄に違いない。
撮影監督はロジャー・ディーキンス。
なかなか芸術的な映像を撮る人で、予告編を見ると絵の美しさが際立っている。
はたしてアクションシーンとの融合はいかに。
最新予告編
先日公開されたばかりの悪役シルヴァの登場シーン
本作の主題歌はイギリスの人気歌手アデルが担当。その名も「Skyfall」。
既にWEBサイトで公開されているので聴くことが出来る。
そんなアデルのコメントを紹介。
「私が『007 スカイフォール』のテーマ曲に関わることには、最初はちょっと及び腰だったの。ジェームズ・ボンドの曲といえば、もの凄く大きな注目が集まるし、プレッシャーも大きいから。でも、脚本を読んで文句なしに気に入ったし、ポール・エプワースも色々面白いアイデアを出してくれてたから、気が付いたら、これをやらない手はないって思うようになったのよ。あらすじに合わせて曲を書くことは本当に楽しかった。私にとって初めての経験だから、凄く面白かった。ストリングスを録音した時は、人生で最も誇らしく感じた瞬間だったわ。60歳になった時には、きっと髪を梳かしながら『私は昔ボンド・ガールだったんだから』なんて言ってるはずよ!」
なかなか可愛らしい人だ。
曲はエレガントで壮大な感じ。
「007/スカイフォール」は12月1日に日本公開。遅い!
しかし楽しみでしょうがない。
「ドライヴ」:現時点で今年No.1の作品
現時点で今年No.1の作品。
友達に薦めたら「なんか途中からエグくない?まあまあ面白かったけど」と言われたが、僕の中では相変わらずのNo.1である。
「ドライヴ」
★★★★★★★★★★ 10点
この映画の良さは、一言で言えば「カッコよさ」。
どのシーンを切り取っても絵になる美しさ。スローモーションを多様した独特の映像表現。ピンクのネオンサインにユーロビートが響きわたるオープニング。アドレナリンの爆発するカーチェイス。そして劇中ほとんどセリフのない主人公。
ご覧頂ければわかるだろうが、全てが格好良いのだ。とにかくキマってる。
誤解のないよう言っておくが、この「ドライヴ」はカーチェイスがメインの映画じゃない。
確かに車に乗っているシーンは多いのだが、カーチェイスは劇中2回しか登場しない。(しかもそのうち1回はとても地味なもの)
アメリカで「ワイルド・スピードみたいな映画かと思ったのに違うじゃないか!」と訴訟されたという話は、相手の頭がおかしいとはいえまさにそれを物語っている。
また、過激なバイオレンス描写もあるので注意。
この映画のキャッチコピー「疾走する純愛」というのはあながち間違ってはいないが、決してカップルでは見ないように。
主人公は凄腕のドライビングテクニックを持つドライバー。昼は車の修理工場で働き、夜は強盗を逃がす運転手。
そんな彼が、同じアパートに住むアイリーンという女性を気にかけるようになる。彼女は子持ちの母親で、夫は刑務所暮らし。好都合である。
次第に愛を育んでいく2人。
しかし、急にアイリーンの夫が刑務所から戻ってきてしまう。
夫は刑務所から戻ると昔の仲間に強引に仕事を依頼され、断ると家族まで危険な目にあってしまうことに。
主人公は彼の仕事を手伝うことにするが・・・。
この「ドライヴ」は、余分な贅肉をゴッソリ削ぎ落としたシンプルな映画。
シンプルなストーリー。シンプルな登場人物。
主人公は最後まで名前さえわからないし、セリフも数えるほどしかない。生い立ちも謎である。
そんな主人公と愛を育むアイリーンとのシーンでさえ、2人がただ見つめ合って微笑んでいるだけだ。
そんなシンプルな映画だが、僕は「贅沢」な映画だとも言いたい。
「シンプル」と「贅沢」は相反するように聞こえるが、ここでいう「贅沢」さはストーリーや登場人物の話ではない。
時間の使い方、間の取り方が非常に贅沢なのである。
例えば、主人公とアイリーンが会話するシーン。前述の通り、2人のシーンはほとんど会話がなく、ただお互いを見つめ合っているだけ。その様子をゆっくりと、ゆっくりととらえているのである。
例えば、印象的なエレベーターでのキスシーン。このシーンは実際の時間にしてわずか数秒なはずだが、スローモーションで2人を非常にゆっくりととらえている。主人公が彼女を端によせ、手をまわし、ゆっくりと顔を近づける。美しくまるで夢のひとときのようなシーンだ。
例えば、主人公が不気味なマスクを被ってヤクザを追いつめるシーン。今にも殺人が起こるといった緊張感のある場面でも、この映画はたっぷりと時間を使う。無表情なマスクを被り敵をじっくりと見つめる主人公。ゆっくりと敵に近づく、敵も後に下がる、少しずつ歩いて追いつめる主人公、そして海に沈める。恐ろしい場面だ。
どのシーンを切り取ってみても非常に贅沢な時間の使われ方がしている。
そこがまた美しく格好良い。
こちらがキャリー・マリガン演じるアイリーン。
エレベーターでの美しいキスシーン。
この映画でもう1つ面白いのは「驚き」である。
主人公"ドライバー"は全てが謎に包まれており、彼がどんな人物なのか、観客は探り探り確かめていくしかない。
夜の強盗シーンを見ると、慎重で肝が据わった男なのだろう。
また、アイリーンと子供と一緒にいるところを見ると、優しくおっとりした性格のように見える。
しかし、映画が進んでいくと主人公の暴力性が徐々に明らかになっていくのだ。
「こういうのはどうだ。自分で黙るか、歯をへし折られて黙るか。」
それまで静かだった主人公から放たれたこの言葉は、たった一言なのにドキっとする瞬間だ。
そして中盤のモーテルでのシーン。敵から襲撃を受けた主人公は、凄まじいバイオレンスでもってこれを返り討ちにする。
極めつけはエレベーターでのシーンである。これはもう実際にご覧になってほしいが、それまで抑えられた暴力性が一気に爆発する恐ろしい瞬間である。
このように、観客には主人公のことが一切伝えられていないため、彼の行動1つ1つに驚かされることになる。
カメラワークもこれを意識して撮っているように感じる。
例えばちょっとした場面だが、車が故障して困っているアイリーンに主人公が近づいていくシーン。
大体の映画だったらまず車が故障したアイリーンを映し、次に主人公が近づいていくところを映すだろう。
しかしこの映画はその逆で、主人公が歩いていく場面から、最後に車が故障したアイリーンが映されるのである。
観客は原因と結果を逆に見ることになり、主人公の行動にまたちょっとした驚きを感じられる。
同じように逆の見せ方をするシーンがいくつかあるので面白い。
不気味なマスクで敵を追いつめるシーン。
中盤のカーチェイスも見所。
このシーンも凄いことになります
主人公"ドライバー"がいる場面は常に青い壁、暗い場所である。しかしアイリーンといるときは暖かい壁紙、明るい場所になるのだ。
セリフで語らずとも映像や音楽で主人公の気持ちを代弁させるあたりが美しい。
ただし1度だけ、アイリーンが"ドライバー"の暗い世界に引きずり込まれるシーンがある。
それは前述したエレベーターでの壮絶なシーンの直後である。
このシーンだけでも見る価値がある。
映像よし、音楽よし、キャストよし。
特にケチをつけるところはないが、好みは多少分かれる映画なのかもしれない。
僕はこの映画を見て興奮していろんな人に見せたのだが、みんな「面白いっちゃ面白いけど・・・」という返答だ。
まったく腹立たしい連中である。
とはいえ、この映画が素晴らしいのは事実なのでいろいろな人に見てもらいたい。
最高にクールでイカしたクライムサスペンスである。
「トータル・リコール」:オリジナル版に軍配も、十分に面白い作品
オリジナル版「トータル・リコール」は私の大好きな作品。
このリメイク版はかなり楽しめたが、比較するとややオリジナル版に軍配か。
しかしリメイク版の世界観は好きだし複雑に組み立てられたアクションシーンは非常に見応えがあった。
★★★★★★★☆☆☆ 7点
「トータル・リコール」はフィリップ・K・ディックの「追憶売ります」が原作。
あの「ブレードランナー」や「マイノリティ・リポート」の原作者だ。
1990年にポール・ヴァーホーヴェン監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で映画化され、大ヒットを記録してる。
オリジナル版では異様な世界観と悪趣味さ、つるべうちのアクションと壮絶なバイオレンス描写が魅力だ。
当時まだ売り出し中だったシュワルツネッガーの鬼気迫る演技も印象的だし、あの高騰感のあるテーマ曲も忘れられない。
映画全体が妙な色彩を帯びていてどのシーンを見ても一発で「トータル・リコールだ」とわかるほどだった。
それを今度は「ダイ・ハード4.0」や「アンダーワールド」のレン・ワイズマン監督がリメイク。
(興行的にはパッとせず終わってしまったのが残念)
リメイク版ではオリジナル版の世界観から大きく変化している。
まず「ブレードランナー」のような退廃として異文化な世界と、「マイノリティリポート」のようなバリバリのSFの世界の2つが登場する。
オリジナル版が赤みを帯びた色彩をしていたのに対し、リメイク版は青みを帯びたクールな色合い。
映像も格段にパワーアップし見応え抜群だ。
オリジナル版の悪趣味な面白さはないが、ワクワクするようなSFグッズをふんだんに盛り込むことで違った面白さを与えてくれた。
ゴミゴミした下界の様子。異文化なところが面白い。
浮いた車でのカーチェイスシーン。格好良い。
ロボットを操り主人公を追いつめるローリー。クール。
大きな戦争によって荒廃した近未来。生き延びた人類は、裕福層と貧困層の二極化が進んでいた。
工場労働者のクエイドは、毎日に嫌気がさしちょっとした楽しみを・・・と思い人工記憶を移植してみようと考える。
そこでちょっぴり怪しいリコール社に行って「実は自分はシークレットエージェントだった」という中2病な夢を見させてもらおうとする(笑。
(僕だったら迷わずエロい夢を見させてもらうだろう)
今にもお楽しみが始まる、というときに急にリコール社が特殊部隊に襲撃される。だがしかし、クエイドはなぜか急に強靭な身体能力を発揮しこれを返り討ちにしてしまう。
「実は自分は本当にシークレットエージェントだったのか?もしくはこれは夢なのか?」と疑問を抱きつつも、自分の記憶を求めて強大な組織に立ち向かっていくのだった・・・。
おおまかなストーリーはオリジナル版と一緒だが、舞台は火星から地球に交代している。
キャストもムキムキのシュワルツネッガーから細身のコリン・ファレルに交代。
どう見ても最初から強そうだったシュワちゃんに比べ、コリン・ファレルは"実はシークレットエージェント"な設定にピッタリ。シュワちゃんの迫力には勝ててないが、悪くないんじゃないだろうか。
敵となる妻役のケイト・ベッキンセールもなかなか良い。シャロン・ストーンのような憎たらしさがあったらもっと良かったかもしれないが、今回は登場シーンが非常に多くなっており嬉しい限り。
このケイト・ベッキンセールという女優さん、実は監督の妻だったりするので当然見せ場も多くなるだろう(笑。
そしてヒロインはリメイク版のが断然可愛い。オリジナル版はお世辞にも可愛いとは言いがたかったのでこれは嬉しい変更だ。
ただ、ケイト・ベッキンセールと似たような見た目をしてるのでもうちょっと違うタイプでも良かったんじゃないかとは思う。
最後に、肝心の悪役は完全にオリジナル版に軍配。リメイク版ではその辺にいるおっさんレベル。まあ悪役はおっさんよりもケイト・ベッキンセールが担っている感じなのかも。
そんなに強そうでないコリン・ファレル。役柄にはピッタリ。
こちらがケイト・ベッキンセール。この人にだったら殴られてもいいです。
アクションシーンは思いっきりパワーアップ。
凄いと思ったのは、劇中に登場する場所をちゃんと使いこなしたアクションが用意されていること。
ゴミゴミとした下界で屋根をかけまわる一連の追いかけっこ、未来の車での壮絶なカーチェイス、地球の裏側に移動する列車でのクライマックス、などなど。
僕が好きなのはカーチェイスと、エレベーター内での格闘シーンだ。
ビル内を縦横無尽に移動するエレベーター内で、縦横に細かく動きまわっての複雑なアクションシーン。非常に工夫されており見応え抜群だ。
どのシーンもとても良く出来ており驚かされっぱなしだった。
アクションは凄いのだが、リメイク版の問題点はドラマ性である。
こんなに面白いアクションシーンがいっぱいあるのに、どうも盛り上がらないのだ。
まず、淡々とした映画の進行。
これはもうちょっとした演出とかの問題なのだろうが、鬼気迫る場面や本来だったら盛り上がるべきシーンもどれも淡々としている。
さらに人物描写の薄さもこれを手伝って、登場人物の誰にも感情移入できなくなってしまった。
次に、この世界の設定にピンとこないのも問題。
戦争で荒廃し裕福層と貧困層が二極化している世界、という設定がいまいちピンとこない。
映画中でほとんど出てこなかったりするし、そこで「貧困層を救おう!」という展開になってもいまいちノリきれない。
それに比べオリジナル版は世界観がしっかり確立されていた。
悪役の目的とゲリラの目的もはっきりしていたし、主人公が途中から火星を救おうとする過程も自然だった。
だからクライマックスも非常に盛り上がったし、ラストのカタルシスも凄かった。
リメイク版のアクションシーンは確かに凄いが、結果的にオリジナルのほうが満足度が高くなってしまった。
こちらはオリジナル版。いろんな意味で鬼気迫ってます・・・!
まあしかしそんなオリジナル好きをクスっとさせてくれるオマージュを連発するのがこのリメイク版の憎いところ。
オリジナル版で火星にいた3つおっぱいの女もしっかり登場するし、シュワちゃんがでかい女に変身するあのシーンちゃんと登場。
それぞれちょっとずつ捻ってあって楽しませてくれる。
そして私が何より気に入ったのは、オリジナル版で出てきた「汗」のシーンである。(覚えてる人は少ないかな?)
これはリメイク版のほうが美しくドラマチックに仕上げてある。うーんこれは面白い。
是非ともオリジナルと見比べてほしいところ。
映画として盛り上がらないのがちょっとさみしいが、なんだかんだいって面白かった。
こんなに工夫されたアクションシーンが見られる映画もそうはないし、オマージュの豊富さも微笑ましい。
DVD買うかと言われると悩ましいけど、また見てもいいと思う。
リメイクとしては成功じゃないだろうか。
「プロメテウス」:エイリアンファンは楽しめるが、なんとも微妙な作品
評判がイマイチだったので見ていなかったのだが、飛行機で見られたので鑑賞。
うーん、つまらなくもなかったけど、映画館で見なくて良かったかな。
「プロメテウス」
★★★★★★☆☆☆☆ 6点
まずこの映画、あの「エイリアン」シリーズの前章だということは皆さんご存知だろうか。
もし映画好きなら当然知っているだろうが、そうでない限り(あのCMを見て来た人だったら)まったく知らずに映画中でエイリアンに遭遇することになる。急にあんなものが飛び出してきたら、僕はだったらその場で退場するだろう(笑。
まあ個人的には食わず嫌いしていた人にもこのシリーズに触れてもらう良い機会だと思うが、もし僕が最初に見るのがこの「プロメテウス」だったら、他の「エイリアン」シリーズはもう見なくてもいいやって思っちゃいそうだ。
つまり、少々残念な出来だということ。
ただ、「エイリアン」シリーズのファンであればそれなりに楽しめる内容にはなっている。
人類の起源を探る女性エリザベスと調査チームたち。
彼女らは地球の古代遺跡が示すマップを頼りにある惑星へと辿り着く。
そこに人類の起源があるのではないか、と仮説をたてたのである。
その惑星にはなんと人類そっくりの顔の形をした巨大像があり、さらに謎の生命体とも出会う。
調査チームはいよいよ真相に迫りつつあるのだったが・・・。
調査チームリーダーのエリザベス役にはあの「ミレニアム」でドラゴンタトゥーの女を演じたナオミ・ラパス。(写真中央)
「ミレニアム」では強烈な印象を残した彼女だったが、スッピンだとなんと地味なことか。
「エイリアン」1作目と同じくあとになって主人公だと発覚するキャラなのだが、ちょっと観客をひっぱるには魅力不足な印象。
調査チームに命令を下す女性隊員にはシャーリーズ・セロン。冷酷非情で憎たらしい性格。こういう役を美人にやらせちゃうのは悪くない(笑。
ただこの人物が何を目的に行動しているのかよくわからず、映画中でもあまり活かされていない印象。
そして今作で一番印象的だったのはマイケル・ファスベンダー演じるビショップ。(写真右)
ビショップは人間ではなくロボットなので映画中はずっと無表情。
なのに腹に一物ありといった危険なオーラを醸し出し、淡々とした喋り方の裏にも敵意を感じる。
そんな緊張感のある微妙な演技が非常にうまい。
また、このビショップも何を目的に行動しているか不明である。
この映画で特筆すべきは美しい映像だろうか。
宇宙船の造形も良いし、謎の惑星も雰囲気たっぷり。宇宙服やレーザー銃などのバリバリSFなアイテムも楽しませてくれる。
クライマックスの壮大な破壊シーンも見所である。
そして満を持して登場するエイリアンもファンには嬉しい。
一番最初に登場するエイリアンの形がどう見てもち◯こなのはご愛嬌。今回はなんだかウネウネした触手みたいなやつばっかりで本当に気持ち悪い。
特に腹からエイリアンを取り出すシーンは衝撃。まあ僕はこういうのが大好物なのでよしとしよう。
映像は良いが、ストーリーはどうかと言われると、なんとも微妙である。
人類の起源の真相を求めて必死に調査するクルーたち。
「ゾディアック」「大統領の陰謀」「アンドロメダ...」などと同じく、徐々に真相に迫っていく構図は大変面白い。
最初はボンヤリしていた物事がハッキリ見えてくるとどんどん面白くなっていくものだ。
しかしこの「プロメテウス」、中盤まではそこそこ面白かったものの、終盤になればなるほどボンヤリとよくわからなくなっていくのだ。
「人類の起源って結局なんだったの?」「今何してるの?」って感じ。
さらに前述の通り、登場人物も最初から最後まで何を考えているかよくわからない人たちばかりで、さらによくわからない。
そうすると観客は淡々と画面を見つめるだけになってしまい、クライマックスになってもいまいち盛り上がらない。
細かい設定がかなり荒い点はまあ目をつぶるとしても、肝心の「人類の起源」はしっかり消化してほしかった。
僕の仮説だが、そもそも制作者のやりたいことと観客の求めているものが違うんじゃないだろうか。
観客は映画の前半で示された通り「人類の起源」が知りたい。
ところが制作者は、エイリアンを出したいだけだ。
だから映画はどんどん観客の期待する方向からズレていって、最終的にはただのパニック映画になってしまう。
結局、この映画でわかったのは人類の起源ではなくエイリアンの存在目的だ。
なので最初から「エイリアン」前章だと知ってるファンにはそこそこ楽しめるものの、単純にプロットに引かれて見にくると微妙なんじゃないかな。